政府が実施している物価高対策とは?税理士の立場でできる物価高対策支援も紹介

止まらない物価高によって、生活費は増加し、消費者の購買力は低下し続けています。一方、企業は原材料費やエネルギーコスト増加のために、値上げを選択せざるを得ない状況です。
コストプッシュ型の物価高は、消費と生産の悪循環を生み出していることから、しばらくの間は理不尽な物価高に晒されることになるでしょう。
この記事では、政府の物価高対策の全体像を把握しつつ、税理士として具体的にどのようなサポートができるのかを詳しく説明しています。
目次
政府が実施している主な物価高対策

終わりの見えない物価高の中、政府はどのような対策を講じているのでしょうか。
現在、政府が実施している主な物価高対策を、分野ごとに詳しく紹介します。
- エネルギー価格高騰対策
- 食料品高騰対策
- 生活者支援
- 中小企業支援
エネルギー価格高騰対策
政府が実施するエネルギー高騰対策は主に、電気ガス料金の直接的な値引きやガソリン価格の補助です。
具体的には以前実施されていた「電気・ガス価格激変緩和対策事業」のマイナーチェンジ版として、電力会社やガス会社を通じて、家庭や企業が利用する電気・ガス料金の一部を補助し、請求額から自動的に値引きします。
また、原油価格高騰に対応するため、ガソリンや軽油など燃料油の元売りに補助金を支給し、小売価格の上昇を抑制する「燃料油価格激変緩和対策事業」も継続的に実施されています。
現在実施されているエネルギー価格高騰対策は、一時的な負担軽減が目的ですが、状況に応じた期間延長や補助額の見直しも実施される予定です。
食料品高騰対策
政府の食料品高騰対策は、家計負担の軽減と食料の安定供給を目的として実施されています。
具体的には、米の価格高騰時の備蓄米の放出、飼料価格高騰や燃油高騰の影響を受ける畜産農家や漁業者への支援策です。生産コストの増加を支援することによって、食料品の価格転嫁を抑制し、消費者が入手しやすい価格を維持しようとしています。
その他には、物価高騰の影響を受けた生活者や事業者への支援を行うために、地域の実情に応じた「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」も決定しました。
長期的な視点では、国内生産基盤の強化や食料自給率向上に向けた取り組みも進められています。
生活者支援
政府が実施する生活者支援は、主に物価高騰の影響を受けやすい低所得者層と、その子育て世帯へ向けられたものです。
具体的な施策として、住民税非課税世帯への給付金に加えて、子育て世帯には子ども一人あたり追加で給付金を加算する支援も行われています。
また、「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」を活用し、地方自治体がきめ細やかな支援をできるようにしました。その他には、幅広い世帯の税負担を軽減する目的で所得税の定額減税も実施されています。
中小企業支援
政府による中小企業の生活支援は、原材料費やエネルギーコスト上昇による経営圧迫の緩和、賃上げ支援、生産性向上など多岐に渡ります。
電気・ガス料金の補助は、中小企業も対象です。
その他には、事業再構築補助金やものづくり補助金、持続化補助金など、新規事業への挑戦や生産性向上、販路開拓を支援する各種補助金などがあります。
それぞれの制度をうまく活用することによって、コスト削減や収益力強化を計画できるという具合です。資金繰りが悪化した企業に対しては、セーフティネット保証などの融資制度を通じて、資金調達を支援する措置も講じられています。
【事業者向け】税理士ができる物価高対策の提案
税理士がサポートできる事業者向けの物価高対策は次のとおりです。
- 税制優遇措置の活用を支援する
- 補助金や助成金の活用を支援する
- 資金繰りの改善を支援する
- コスト削減に関するアドバイス
税制優遇措置の活用を支援する
税理士の立場から、さまざまな税制優遇措置の活用をサポートすることによって、コスト負担軽減を支援できます。
中でも賃上げ促進税制は、税理士の立場からサポートしやすい支援制度です。この制度は、従業員の給与を引き上げた企業が法人税額の特別控除を受けられる制度です。
制度を活用した賃上げは物価高における従業員の生活支援と、企業の税負担軽減を両立できます。税理士は、適用要件の確認から、具体的な税額控除額の試算、そして複雑な申告手続きまで一貫してサポートします。
また、将来的なコスト削減に繋がる投資を検討している事業者には「中小企業投資促進税制」や「所得拡大促進税制」といった制度の活用も有効です。
補助金や助成金の活用を支援する
物価高騰下で経営が厳しい事業者に対し、国や地方自治体が提供する多様な補助金・助成金を税理士の観点からサポートできます。
例えば、新しい事業への転換や生産性向上を目指す企業には「事業再構築補助金」や「ものづくり補助金」、ITツール導入による業務効率化を支援する「IT導入補助金」といった補助金が提案できます。
事業転換や生産性向上を目的とした補助金は、設備投資やシステム導入など、物価高騰によるコスト増を吸収しつつ、事業の競争力を高める上で有効です。
また、小規模事業者向けの販路開拓支援である「小規模事業者持続化補助金」や、従業員の賃上げや生産性向上を支援する「業務改善助成金」なども有効です。
税理士は最新の公募の中から、事業者の業種や経営状況にあった補助金・助成金を選定し、申請要件の確認、事業計画書の作成支援、申請書類の準備、さらには採択後の実績報告まで、一連の手続きを代行・サポートできます。
資金繰りの改善を支援する
税理士は、物価高騰で資金繰りに課題を抱える事業者に対し、多様な資金繰り改善策を提案・支援できます。
具体的には、売上減少やコスト増加で経営が苦しくなっている企業には、信用保証協会が提供する「セーフティネット保証」や、大規模な経済危機時に発動される「危機関連保証」などの制度を提案できます。
このような保証制度を有効活用することによって、資金の融通がしやすくなり、当面の運転資金を確保できるというわけです。
税理士は、制度の適用要件の確認、市区町村への認定申請支援、金融機関との交渉まで、一連の手続きをサポートできます。そして、キャッシュフロー計算書の作成や、経費削減のアドバイスなど、経営改善に直結する踏み込んだ提案まで行うことも可能です。
コスト削減に関するアドバイス
物価高騰下で利益が圧迫されている事業者に対して、税理士の視点から実効性のあるコスト削減に関するアドバイスを提供できます。
まず、詳細な財務分析を通じて、どの費用項目が経営を圧迫しているのかを明確にし、無駄な支出を特定します。例えばまず考えられるのは、通信費や消耗品費の見直し、リース契約の再交渉など、日常的な経費削減案の提案です。
日常的な経費の見直しができたら、中長期的な視点でのコスト構造改革の支援も行います。例えば、ITツール導入による人件費や残業代の削減も重要な課題の一つです。
その他には省エネ設備投資を促し、電気代やガス代といったエネルギーコストの削減の支援も考えられます。税務や財政面の多角的なアプローチは、税理士ならではの強みです。
物価高の中で税理士に相談するメリット

物価高の苦境を乗り越えるために、弁護士へ相談するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
考えられるメリットを4点ピックアップしてみました。
- 複雑な制度を理解し適用できる
- 時間と手間を削減できる
- 総合的な視点でのアドバイスを受けられる
- 最新の情報を得られる
それぞれのメリットについて、詳しく説明します。
複雑な制度を理解し適用できる
政府が打ち出す支援策はいずれも効果的なものばかりですが、制度が複雑なため、理解と利用の敷居が高い点がデメリットです。
税理士に相談する最大のメリットの一つは、複雑な制度を正確に理解し、状況に合わせた最適な形で適用できる点にあります。
補助金や助成金は種類が多く、それぞれに細かな申請要件や手続きがあります。税制優遇措置も、どの制度が最も有利なのか、適用条件を満たすのかといった判断は専門知識なしには困難です。
税理士は、最新の法令や制度改正に関する知識を常にアップデートしています。税理士ならではの視点から、それぞれの状況に合った最も効果的な選択肢を提案できるのは大きなメリットと言えるでしょう。
時間と手間を削減できる
事業者として複雑な税務や各種申請手続きに時間を割くことは、あまり良い選択肢ではありません。税理士に相談する大きなメリットの一つは、手続きにかかる時間と手間を大幅に削減できる点にあります。
補助金や助成金の申請は、膨大な書類作成や細かな要件確認が必要となり、肝心の本業を圧迫してしまうでしょう。税制優遇措置の適用も、正しい理解がなければ、かえって無駄な労力を費やしてしまうこともあります。
税理士はこれらの手続きを専門家として、丁寧にフォローできます。最新の情報を元に、必要な書類の準備から申請書の作成、提出までをスムーズに進めることで、事業者の本業への集中をサポートできます。
総合的な視点でのアドバイスを受けられる
税務の専門知識だけでなく経営全般に関することまで、総合的な視点からアドバイスを受けられるのは、税理士に相談するメリットの一つです。
企業の資金繰り改善のためには、節税対策に止まらず、キャッシュフローの最適化やコスト削減策を提案できます。税理士は、クライアントの財務状況を十分に理解のうえ、税務・会計の専門家としての知見を存分に発揮した提案ができます。
経営戦略の策定支援や事業承継、さらには補助金・助成金の活用など、多角的な視点から最適な解決策をサポートできるのは税理士ならではの強みです。
最新の情報を得られる
物価高騰対策に関する政府の施策や税制は、社会情勢に応じて頻繁に改正されたり、新たな制度が導入されたりします。
情報は日々更新されており、最新情報を個人や企業が追い続けるのは非常に困難です。税理士に相談すると、常に最新かつ正確な情報を提供してもらえます。
最新情報に基づいたアドバイスにより、クライアントは常に最適な選択を行うことができ、物価高騰の波を乗り越えるための強力なパートナーを得られるというわけです。
まとめ
現在、政府では物価高対策として、エネルギーや食料品高騰対策をはじめとして、生活者支援や中小企業の支援まで積極的に行っています。中でも、中小企業への支援は多岐に渡っており、状況に一致する補助金や助成金制度をピックアップするのも一苦労です。
税理士は、税務上のサポートだけでなく、経営サポートとして補助金や助成金制度の活用の提案もできます。クライアントから一定の信頼を得るためには、経営サポートの提案も大切なアプローチです。
財務状況を把握している税理士の立場から、より良い提案を届けたいところです。

税理士.ch 編集部
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