法人税対策の今後の予測<相続税対策、法人税対策の今後の行方Vol.6>


佐藤信祐事務所 所長 公認会計士・税理士 博士(法学)
佐藤 信祐 先生

2022/11/25
業界屈指の専門家である佐藤信祐先生が、さまざまな税制や組織再編等に関する新しい論点・最新情報、少しマニアックな税務トピック、判例裁決事例など、独自の視点で解説します。

ヤフー・IDCF事件に係る最高裁判決が公表された頃に比べると、最近の税務調査では、メールが調査の対象になるだけでなく、質問応答記録書が積極的に使用されるようになっており、「税負担減少の意図があったかどうか」「税負担の減少目的と事業目的のいずれが上位になるのか」といった物的証拠が残りにくいものに対しても、積極的に証拠を集めようとしていることがわかる。

かつては、議事録や稟議書といった社内文書を整備しておくことにより、税務訴訟に勝ちやすい証拠を作り、結果として税務調査で否認しにくくするという税務調査対応が考えられたが、現在の税務調査対応としてはそれでは不十分であり、①制度趣旨に沿った形で法人税の負担を減少させていること、②税負担減少の意図はあったものの、事業目的が主目的であった、ということが主張できるようにしておく必要がある。

そして、今後、法人税対策がどのようになっていくのかという点について考えてみると、相続税と異なり、税負担の減少以外の目的が説明できることが多く、節税として認められる範囲は広いと思われる。ただし、かつてに比べて、節税として認められる範囲が狭まっているのも事実であり、税理士からの節税提案はやりにくくなるはずである。さらに、税理士からの提案により実行されている時点で、税負担の減少が主目的であると疑われる可能性が高い。すなわち、税負担の減少が主目的であると疑われることから、制度趣旨に反しないかどうかの検討が重要になる。

それでは、当事務所ではどのように対応しているのかというと、2022年5月30日にHPを改訂し、月額固定報酬の業務のみ対応し、単発のご相談には対応しない旨を明記した。2022年1月24日の日経新聞の記事において、税務調査の傾向が量より質に変わってきたと記載されているが、たしかに租税回避として否認されるリスクが増えたことにより、租税回避に該当しない旨についてのオピニオンショッピングが増えているという実態がある。6項否認の場合には、相談者が企業ではなく個人になることから、そのようなオピニオンショッピングはかなり酷くなるであろう。おそらくそのような状態は2~3年は続くと思われることから、それに対する対策が必要だったからである。

今回までで6回にわたり、最近の租税回避の傾向について解説を行った。10年前と異なり、節税として認められる範囲はかなり狭まっていることから、税理士としてかなり慎重な対応が必要になってくると考えられる。

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