組織再編税制の勉強方法について<深読み 最新税制レビューVol.4>

佐藤信祐事務所 所長 公認会計士・税理士 博士(法学)
佐藤 信祐 先生

2023/4/24
業界屈指の専門家である佐藤信祐先生が、さまざまな税制や組織再編等に関する新しい論点・最新情報、少しマニアックな税務トピック、判例裁決事例など、独自の視点で解説します。

組織再編税制を理解するためには、法律と会計を理解する必要がある。例えば、会社法の施行により、2社以上の法人を被合併法人とする吸収合併を行ったとしても、会社法上は、吸収合併の当事会社は、合併法人1社、被合併法人1社に限られることから、複数の吸収合併が同時に行われたものとして取り扱われる(郡谷大輔ほか編著『会社法の計算詳解』382頁(中央経済社、第2版、平成20年))。これに対し、新設合併の場合には、3社以上の法人を被合併法人とする1つの合併として取り扱われる(郡谷ほか前掲549頁)。その結果、法人税法上も、吸収合併における税制適格要件では、複数の吸収合併が同時に行われたものとして判定し、新設合併における税制適格要件では、3社以上の法人を被合併法人とする1つの合併が行われたものとして判定することになる(国税庁HP文書回答事例「三社合併における適格判定について」参照)。

そして、法人税確定申告書は、会計上の損益計算書に対する申告調整が行われることから、会計仕訳を理解しないと、申告調整を行うことができないことはいうまでもない。それだけでなく、組織再編税制の様々なところに企業結合会計及び事業分離等会計の考え方が採用されているという特徴もある。例えば、合併法人株式又は親法人株式のいずれか一方の株式又は出資以外の資産の交付を受けた場合にのみ、被合併法人の株主等において株式譲渡損益が計上されることになるが(法法61の2②)、このような制度になった理由は、株主等が投資家であるという前提に立った考え方として整理されたからである(朝長英樹『企業組織再編成に係る税制についての講演録集』32頁(日本租税研究協会、平成13年))。株主等が投資家である場合において、合併法人株式又は親法人株式のいずれか一方の株式又は出資以外の資産の交付を受けた場合にのみ株式譲渡損益を計上するという考え方は、事業分離等会計における考え方と整合的である(事業分離等に関する会計基準37項、43項参照)。

このように、法律と会計を理解した後に租税法を理解する必要があるが、租税法も法律であることから、まずは条文を読み解く必要がある。そして、条文を解釈したものとして、法令解釈通達、その他法令解釈に関する情報、文書回答事例、質疑応答事例などが国税庁のホームページに開示されていることから、それを閲覧することも有用であろう。もちろん、主要な裁判例及び裁決例を閲覧しておくことも有用である。

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