合同会社と分割型分割<深読み 最新税制レビューVol.7>
佐藤信祐事務所 所長 公認会計士・税理士 博士(法学)
佐藤 信祐 先生
2023/7/26
業界屈指の専門家である佐藤信祐先生が、さまざまな税制や組織再編等に関する新しい論点・最新情報、少しマニアックな税務トピック、判例裁決事例など、独自の視点で解説します。
分割対価資産を交付する分割を前提にすると、法人税法上、分割型分割とは「分割により分割法人が交付を受ける分割対価資産(括弧内省略)の全てが当該分割の日において当該分割法人の株主等に交付される」ものをいう(法法2十二の九イ)。
これに対し、会社法上、分割に伴って剰余金の配当を行うことができる分割法人は株式会社に限定されていることから(会社法758八、760七、763①十二、765①八)、合同会社を分割法人とする分割型分割はできないとする考え方があり得る。
この点については、分割の日に分割法人が取得した分割承継法人の株式又は出資を利益の配当として社員に分配すれば、分割対価資産の全てが分割の日において分割法人の社員に交付されている事実は変わらないことから、合同会社を分割法人とする分割型分割はできないと解するべきではない。さらに、そのように解してしまうと、会社法上、分割契約書において剰余金の配当として分配することを定められる資産が分割承継法人の株式又は出資に限定されているため(会社法758八ロ、760七ロ)、三角分割型分割を行うことができないと解さざるを得なくなってしまう。法人税法上、三角分割型分割が存在することを前提とした規定(法法61の2④など)があることから、そのように解することは適当ではないであろう。
ただし、合同会社における利益の配当は、社員が合同会社に対して利益の配当を請求し、その請求に基づいて行われることになる(会社法621①)。すなわち、社員が請求してから分配されているという理由により、分割対価資産が分割法人の株主等に「交付」されていると考えることができないと解した場合には、法人税法上、合同会社を分割法人とする分割型分割は認められないということになる。これに対し、会社法621条2項に基づく定款の定めにより、利益の配当の請求ができることとなった時点で受取配当等を認識することから(法基通2-1-27(1)ロ)、当該定款の定めにより、分割の日に利益の配当として株主等に分配することができるのであれば、分割型分割として取り扱うべきであると解することもできる。
本稿校了時点では、国税庁の公式見解は公表されていない。私見ではあるが、上記のように三角分割型分割を行うことができると解されるのであれば、合同会社を分割法人とする分割型分割を行うことができると解するべきであると考えている。
この点につき、もし懸念を感じられるのであれば、合同会社から株式会社に組織変更を行ってから分割型分割を行うというのも一つの選択肢である。