マンション評価の見直し案公表<気になる税務トピックVol.14>

白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生

2023/7/26
『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。

マンション評価の見直し案公表
「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」によるマンション評価の詳細が明らかになり、国税庁より評価の見直し案が公表された。近くパブリックコメントを実施して通達が改正される見込みだ。

見直し案は次の算式で評価する。2階建以下の建物や区分登記された二世帯住宅は今回の改正からは除かれる。

現行の評価額×乖離率×0.6
    =改正後のマンションの評価額
※乖離率=①×△0.033+②×0.239+③×0.018
+④×△1.195+3.220

①築年数…築年数が古いほど評価が下がる
②総階数指数=総階数÷33(1.0を超える場合は1.0)
…総階数が多いほど評価額が上がる
③所在階…高い階を所有するほど評価が上がる
④敷地持分狭小度
=マンション一室に係る敷地利用権の面積÷専有面積
…高層のマンションほど持ち分が細分化されるため
 評価が上がる

 乖離率に用いる「3.220」は定数であり、これに築年数、総階数、所在階、敷地持分狭小度という4つの要素の指数を増減させることになる。
 乖離率は地域による違いを反映したものにはなっていない。4つの要素が同じであれば大阪と東京のマンションは同じ乖離率になる。

■ 評価はどのように変わるか
 たとえば築5年、総階数30階建てマンションの25階を所有、専有面積70m2で敷地狭小度が「0.15」とすると乖離率は「3.54」となる。これに最低評価水準が考慮され「0.6」を乗じることになるので、改正後の評価額は現行の評価額の2倍程度になる。

仮に実勢価格が4億円で通達改正後の評価額が2億円だとしたら、タワマン節税は相変わらず実行されることになるだろう。これに備えて、評価が適当でないと認められる事例については通達6項の取扱いを明確化し個別に評価するとのことだ。

■ 改正後の実務はどうなるか
見直しの対象になるのは構造上居住の用に供することができるものに限る。区分所有オフィスなどは改正の対象にならないということだ。さらに、1棟のマンションを保有する場合は改正の影響はない。昨年、総則6項をめぐり最高裁判決の対象になったマンションは1棟買いだったから評価見直しの対象にはならない。

そもそもタワーマンションだけを狙い撃ちにした評価増の改正は出来ない。タワーマンションを定義することは困難だからだ。マンション以外にも実勢価格と相続評価が乖離している不動産はいくらでも存在する。節税がダメと言い出したら範囲が広がり過ぎる。そうしたことからマンションに限定する改正になったのだろう。

通達改正の目的はタワマン節税の防止を目的としたものではないと思っている。たとえば築10年15階建てマンションの6階の1室を所有、敷地狭小度が「0.75」とすると改正後の評価額は現行の評価額の1.3倍程度になる。言ってしまえばマンション評価全般の引き上げによる増税を目的とした改正ではないだろうか。

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