2025年のインバウンド消費と2030年までの6,000万人、消費額15兆円の目標に向けた展望について

2025年のインバウンド消費と2030年までの6,000万人、消費額15兆円の目標に向けた展望について

2025年のインバウンド消費は、2024年度よりも更に活発になっており、訪日外国人旅行者数は4,020万人に達し、過去最高になると推計されています。

一方で日本政府が掲げる2030年までに訪日外国人旅行者6,000万人、消費額15兆円という目標を達成するためには、外国人観光客の地方への誘致という課題があります。

税理士としてインバウンド消費活性化のために何ができるのか考えてみましょう。

目次

2025年3月時点でのインバウンドの情勢

2025年3月時点で、インバウンド消費は昨年以上に活発になっています。まず、JNTOや国土交通省観光庁が発表したデータを見ていきましょう。

2025年の訪⽇外国人観光客数は3月時点で累計1,000万人を突破

2025年はインバウンド消費が活発になっています。

JNTO(日本政府観光局)の発表によると2025年3月の訪⽇外国人観光客数は3,497,600人で、2024年の同じ時期と比べると13.5%増加し、過去最高を更新しています。

また、今年に入ってからの訪⽇外国人観光客数は3月の時点で累計1,000万人を突破しており、過去最速の勢いとなっています。

インバウンド消費も3月時点で2兆2,720億円

国土交通省観光庁の2025年1-3月期1次速報のインバウンド消費動向調査によると、訪日外国人旅行消費額は2兆2,720億円で2024年の同じ時期と比較すると28.4%増加しているとのことです。

国籍・地域別では次のようになっています。

 2025年2024年
中国5,443億円3,574億円
台湾3,168億円2,606億円
韓国2,824億円2,416億円
米国2,188億円1,687億円
香港1,534億円1,586億円

このように殆どの国からのインバウンド消費額が増加していることが分かります。

訪日外国人旅行消費額の費目では宿泊費と飲食費が増加

2025年1-3月期1次速報のインバウンド消費動向調査では、訪日外国人旅行消費額の費目も紹介されています。

 2025年2024年
宿泊費7,585億円5,719億円
飲食費5,119億円3,805億円
交通費2,279億円1,861億円
娯楽等サービス費1,058億円1,090億円
買い物代6,661億円5,220億円

このように宿泊費と飲食費で大きく伸びていることが分かります。

訪日外国人1人当たり旅行支出は22万2千円

2025年1-3月期1次速報のインバウンド消費動向調査によると、訪日外国人1人当たり旅行支出は22万2千円となっています。2024年の同じ時期と比較すると17万7千円だったのと比較してやはり大きく伸びています。

旅行支出の多い国は次のとおりです。

国名支出額
オーストラリア366,640円
フランス338,442円
英国320,966円
シンガポール318,501円
カナダ317,214円

このように欧米諸国からの訪日外国人の旅行支出額が多いことが分かります。

では、それぞれの国の訪日外国人が何に支出しているのでしょうか?

費目別旅行支出を国地域ごとに比較すると次のようになっています。

宿泊費

国名支出額
オーストラリア154,320円
フランス142,564円
英国135,815円
ドイツ131,454円
イタリア130,135円

飲食費

国名支出額
オーストラリア84,948円
シンガポール84,921円
カナダ79,029円
フランス76,440円
スペイン73,305円

交通費

国名支出額
英国45,348円
カナダ43,821円
イタリア43,473円
スペイン42,882円
フランス40,402円

娯楽等サービス費

国名支出額
オーストラリア34,954円
ドイツ22,596円
フランス19,517円
カナダ16,053円
ロシア14,250円

買物代

国名支出額
中国103,137円
ロシア99,451円
シンガポール87,400円
香港76,851円
マレーシア76,510円

宿泊費、飲食費、交通費、娯楽等サービス費は、オーストラリアや欧米諸国からの訪日外国人による支出が多いことが分かります。

一方、買い物代については、中国や香港などのアジアからの外国人による支出が多いことが分かります。

2025年のインバウンドのトレンド

2025年のインバウンドのトレンドは次の3つです。

  • 金沢がアメリカの有力旅行メディアから2025 年に行くべき世界の旅行先 25 選に選ばれた
  • 2025年大阪関西万博が開催中
  • 2025年の訪日外国人旅行者数は4,020万人と推計されている

一つ一つ見ていきましょう。

金沢がアメリカの有力旅行メディアから2025 年に行くべき世界の旅行先 25 選に選ばれた

ナショナルジオグラフィックは、ウォルト・ディズニー・カンパニーが運営する旅行メディアです。

ナショナルジオグラフィックが2024年10月23日(火)に発表した「Best of the World 2025(2025 年に行くべき世界の旅行先 25 選)」に金沢が選出されています。

金沢は、和風庭園の兼六園の他、江戸時代からの武家屋敷や茶屋街が残る伝統的な街です。また、金箔の99%を生産しており、金箔を使った工芸品が売られていますし、工芸品づくりの体験もできます。

このような点から、金沢は「本物の日本」を体験できる旅行先として評価されたとのことです。金沢やその周辺のインバウンド関係業者にとってはまたとない機会になると思います。

2025年大阪関西万博が開催中

2025年大阪関西万博が開催されています。
開催期間は、2025年4月13日(日) から2025年10月13日(月)までです。

日本国際博覧会協会(万博協会)によると、4月の来場者の全体の13%が訪日外国人客だったとのことです。万博協会は会期中の想定来場者数を2,820万人と想定し、このうち、12.4%の350万人が訪日外国人客と見込んでいます。

4月の来場者の割合からするとほぼ想定通りになっていると言えるでしょう。

2025年の訪日外国人旅行者数は4,020万人と推計されている

JTBによると、2025年の訪日外国人旅行者数を4,020万人(対前年108.9%、対2019年126.1%)と推計しており、推計通りなら過去最高の数字になるとのことです。

過去の訪日外国人旅行者数は、2024年に年間で3,600万人を突破し過去最多となっています。

新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年の3,188万人よりも大きく増加しています。ただ、新型コロナウイルス感染症収束後の急激な需要回復が一巡するとみられており、伸び率は緩やかになるとのことです。

2030年までに訪日外国人旅行者6,000万人、消費額15兆円を達成するためには?

日本政府は、2030年までに訪日外国人旅行者を6,000万人、消費額を15兆円とする目標を掲げています。

この目標を達成するための戦略の一つとして、着地消費額100万円以上の高付加価値旅行層を地方に誘致することを掲げています。

高付加価値旅行層は、大都市圏での買物消費等が多い一方で、地方部での消費が少ないとされています。

そこで、高付加価値旅行層を地方に誘致することが課題となっているのです。

そのためには、地方の魅力を発掘して、外国人観光客にも魅力に気づいてもらう必要があります。さらに、外国人観光客を誘致するための環境づくりも必要です。

こうした取り組みを政府が後押しすることになりました。

第一歩として、令和5年3月に高付加価値なインバウンドのモデル観光地11箇所を選定しました。

  • 東北海道エリア
  • 八幡平エリア
  • 那須及び周辺地域エリア
  • 松本・高山エリア
  • 北陸エリア
  • 伊勢志摩及び周辺地域エリア
  • 奈良南部・和歌山那智勝浦エリア
  • せとうちエリア
  • 鳥取・島根エリア
  • 鹿児島・阿蘇・雲仙エリア
  • 沖縄・奄美エリア

こうしたエリアでは、

  • ウリ:高付加価値旅行関心層にも訴求力のある魅力的コンテンツの発掘・商品造成
  • ヤド:高付加価値なインバウンド宿泊施設の整備
  • ヒト:高付加価値旅行層の満足度を高める役割を担う人材の確保や育成
  • コネ:海外高付加価値層とのネットワーク、情報発信
  • アシ:地方への交通の便

これらの点について、政府が集中的な支援等を行っていくということです。

税理士としてインバウンド推進のためにできることは?

税理士としては、インバウンド関連業界での資金調達や税務面でのサポートを積極的に行っていることが考えられます。特に、高付加価値なインバウンドのモデル観光地に選ばれた地域では、宿泊施設の整備などの事業が活発化すると考えられます。

これに伴い、資金調達の必要性も高まるでしょう。

国土交通省観光庁でも、地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりのためのガイドブック、手引書等を交付しているので、こうした資料を参考にしながら、インバウンド関連業界の資金調達のアドバイスを行うといった活動ができるのではないでしょうか。

参考:ガイドブック、手引書等(地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり)| 観光庁

まとめ

2025年はインバウンド消費がますます活発化します。
一方で、新型コロナウイルス感染症収束後の急激な需要回復が一巡し、伸び率は鈍化すると見られています。

政府は、2030年までに訪日外国人旅行者6,000万人、消費額15兆円という高い目標を掲げており、これに向けて、地方でも観光地や宿泊施設の整備が進められます。

税理士としてはこうした業界での資金調達のサポートや税務面のアドバイスを行っていくとよいでしょう。

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