ネット時代に必要な企業防衛の極意<ネット時代に必要な企業防衛の極意 vol.35>

昨今のサイバー攻撃強化で改めて注目度が高まっているセキュリティ対策。2022年4月に施行された改正個人情報保護法でも、個人情報の利用や提供に関する規制が強化されています。一方で、ネット上の情報漏洩や誹謗中傷といった事例も近年、急増しています。当コラムでは、こうしたネット上のリスクや対応策について詳しく解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.139(2025.5)に掲載されたものです。


弁護士法人戸田総合法律事務所 代表
中澤 佑一 先生

はじめて訴状を受け取った企業の方へ 

1. 訴えられたと分かるのはいつ?

 民事訴訟では、訴えを起こす側を「原告」、訴えられる側を「被告」と言います。訴訟は、原告が裁判所に対して請求内容を記載した訴状を提出することで始まりますが、訴状を提出するときに原告から被告への連絡は不要です。

 被告側が提訴された事実を認識するのは、裁判所から訴状の送達を受けるタイミングです。原告が裁判所に訴状を提出すると、内容が審査され、場合によっては修正や追加の資料提出などの宿題がでます。そのような原告側の作業が終わったタイミングで、被告側への訴状の送達が行われます。「訴状が届いていないのでコメントできない」という文章をよく見ますが、提訴直後は被告側は訴訟の内容すらも全く分からないのが通常です。

 訴状は裁判所から「特別送達」という方法で被告に送付されます。特別送達で裁判所から訴状が届く際、A4サイズの茶封筒で届くのが一般的です。

2. 裁判所の封筒の中身

 特別送達で届いた封筒の中には、原告が裁判所に提出した訴状と証拠などが入っていますが、一番重要な書類は第一回の口頭弁論期日(裁判所に当事者双方が出頭する日)の呼出状です。何月何日に裁判を開くので、来てくださいという内容と、主張を記載した「答弁書」を何月何日までに提出してくださいという内容が記載された藁半紙です。

 まずは、この呼出状でスケジュールを確認するようにしましょう。通常ですと、特別送達を受け取るタイミングから1か月ほど先に、裁判の日が設定されているはずです。

3.「答弁書」を準備する

 被告側が自身の主張として初めに裁判所に提出する書面が「答弁書」です。訴状に対して違うと思うこと、応じられないことを記載します。この答弁書は、第一回の口頭弁論期日までに提出(FAXもしくは郵送)するか、呼び出された期日に法廷に持参します。書式は特別送達の封筒に入っていますので、それを利用してください。裁判所用と原告用の2通同じものを用意して、それぞれ送付します。

 ちなみに、期限を切られて焦ってしまいますが、被告としては「答弁書」にすべての主張を記載する必要はありません。ひとまず「原告の請求を棄却する。詳細は追って主張する。」とだけ記載しておけば、初回の口頭弁論期日は問題ありません。また、初回の口頭弁論期日に被告側は「答弁書」だけ提出して、出廷しないことが実務上広く行われています。特に不利益にもなりません。なお、二回目以降の裁判については、答弁書提出後に裁判所から電話等で日程調整の連絡があります。

 なお、法人が被告となっている場合、法律上の資格がある代理人に依頼しない限り、裁判に出廷して訴訟上の行為ができるのは、法人の代表者(社長)のみです。

4. 弁護士に相談、依頼する場合

 弁護士に訴訟対応を依頼する場合は、裁判所から訴状を受け取ったタイミングで、裁判所から届いた封筒の中身を全部持って相談に来ていただければと思います。封筒の中身を整理して中に入っていた訴状だけを持参して相談にいらっしゃる方もいるのですが、弁護士としては裁判所が設定した事件番号や裁判の日が気になりますので、一式すべて持参していただけると助かります。

中澤 佑一

なかざわ・ゆういち/東京学芸大学環境教育課程文化財科学専攻卒業。 上智大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了。2010 年弁護士登録。2011 年戸田総合法律事務所設立。 埼玉弁護士会所属。著書に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル』(単著、中央経済社)、 『「ブラック企業」と呼ばせない! 労務管理・風評対策Q&A』(編著、中央経済社)など。

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