採用の最優先ターゲットは「意欲と柔軟性のある未経験者」
「経営指針書」でマインドとカルチャーを養成する石黒健太流教育に迫る!Vol.2

採用の最優先ターゲットは「意欲と柔軟性のある未経験者」 「経営指針書」でマインドとカルチャーを養成する石黒健太流教育に迫る!

石黒健太税理士事務所 所長 石黒 健太

労働人口の減少に伴い、理想とする人材の採用はますます困難な時代となっている。昨今では、やっとの思いで採用に成功したと思っても、就労開始から数日で退職というケースも。税務会計の業界でも、優秀な人材確保が困難なことは決して他人事ではない。そうした中、とかく経験者が優遇されることが多い税務会計業界において、未経験者の採用を積極的に行っているのが京都市南区にオフィスを構える石黒健太税理士事務所だ。所長の石黒健太氏が考える「未経験者採用のメリット」とは。さらに、人材定着とその成長活躍を後押しする、独自の研修体制についてお話をお伺いした。

スタッフの成長意欲を応援しながら、
長く働き続けられる環境づくりを

貴事務所で成長・活躍する業界未経験者の方には、どんな特徴をお持ちの方が多いのでしょうか。

税務会計の業界としては「未経験者」とはいえ、営業経験や大手企業での勤務経験を持った方を中心に採用を行っています。そのため、コミュニケーション力の高い方が多い点が特長的です。そうした方に対して、どんなことをお客様に話せば喜んでもらえるかといった「型」を教えることから、研修をスタートしています。
一通り「型」を覚えてできるようになると、「もっと良いものを提供したい」とか「これでお客様に喜んでもらえるのだろうか」とモヤモヤしてくるようです。私は、このモヤモヤと考えだすのは、とても良いことだと思っています。

最近では入社3年目くらいのスタッフたちが、自ら「財務コンサルの勉強をしたい」「コーチングをもっと学びたい」と言ってくれました。こうした意欲を汲み取りながら、順序立てて効果的に成長していけるよう支援してあげたいですね。

そうした意欲の高い方々が、成長を長く続けていくためにも、長く安心して働ける環境づくりにも取り組まれていると伺いました。

そうですね、例えば当事務所ではフレックスタイム制を導入しています。フレックスの制度があるだけでなく、それを存分に活用できるカルチャー面も特長的かもしれません。当事務所では開業当初から多様な働き方をするメンバーが集い、力を発揮してきました。土曜出社する人も、午後から出社の人も、在宅勤務の人もいて、互いに気兼ねなく、協力し合いながら働くことができる。こうした環境により、実際に制度を活用するにあたっても、心理的なハードルが低い職場だと感じてもらえるようです。
フレックスタイムの利用において、前の週に予定表へ入力するというルールはありますが、基本的にスタッフ個々の裁量に任せています。それが上手くいっているのは、進捗管理や連絡体制、タスク管理などがチャットやシステムを使って不便なくできる体制が整っているから。そのおかげで、出産や育児、介護といった事情を抱える方でも、長く勤めてもらえるようになりました。またこうして仕組化をしっかりと進めることで、採用の面でも優秀な人材から応募をいただけるようになったと感じています。特にレベルが高くて優秀な女性スタッフが増えましたね。
また先ほど、当事務所での活躍において資格の有無は関係ないとお話ししました。入所に際して資格取得を希望する方には、資格勉強と実務の両立は非常に大変なことなので、その現実はしっかりとお伝えしています。簿記1級や簿記2級の勉強量と、全く異なる次元の勉強量が必要ですし、実務の責任も当然負ってもらわなければなりませんから。ですが、その覚悟を持って臨まれる方には、各種資格取得の支援を惜しみません。1年につき、1科目分の受講料補助を行っていますし、希望があれば短時間正社員での勤務も可能です。有給休暇もほぼ全員が100%消化しているので、試験直前の休暇なども気兼ねなく取得できます。

そうした働き方の下で、評価についてはどういった点を見ているのでしょうか。

時間が自由だからこそ、やりきる。自ら調整して完結する、という意識が高い職場です。評価する側としても、そこを見るようにしています。時間数ではなく、工数や成果物で評価するので、残業を是とせずに定時内でメリハリをつけて働くことができ、フレックスタイム制も在宅勤務も遠慮なく実現できる。そんな風土をつくることができました。時間内でしっかりと成果が出せるよう、皆がスキルアップを意識しています。

コンサルティングサービスのラインナップを拡大!
より多彩な場面で貢献を深められる組織へ

事務所の今後として、目指している姿やサービスはどのようなものを考えていらっしゃいますか。

今の段階では、先ほどもお話ししたように未経験者でも対応できるお客様に絞ったサービス提供を行っています。ですが、やはり今後は、スタッフたちの成長と共にサポートの範囲を広げていきたいですね。若手を入れて対応力を広げながら、現職スタッフのレベルアップ・スキルアップを図っていく。そうすることで、より付加価値の高い業務でもご支援できる体制を整備していきたいと考えています。

また、その過程において各種コンサルティングサービスやセミナー事業など、仕事のすそ野自体を広げていく取り組みにも力を入れていきたいですね。私自身が組織づくりや成長支援という仕事が好きなので、この分野に注力してみたいと考えています。

具体的に計画されているものや、動かれているサービス展開などあるのでしょうか。

例えば現在、税理士向けの「一億突破会」を行っているのですが、これを別事業にも横展開するような動きを計画中です。もう少し具体的にお話しすると、顧問先の整体師さんとタッグを組んで、整骨院に向けた経営コンサルセミナーをやりましょう、といった計画をしています。以前までの当事務所は創業支援の分野で業務拡大してきましたが、この「一億突破会」は「創業の先」を支援する内容になります。
事業計画をつくり、組織風土や文化をつくり、人が定着する体制も整える。そうして、事業と企業をもっと成長させたい。そうした想いを持つ経営者の方々へ向けて、当事務所の経営指針書を策定する過程や内容は役立てられると思うのです。このように当事務所のノウハウやケーススタディを応用し、コンサルティングサービスのラインナップを増やしていくことで、セミナーに参加してくださった企業をはじめ、業種を問わないコミュニティが当事務所を中心としながら形成される。そうした展開をしていきたいなと思っています。

お客様と日々接して、そうしたサービスが求められているという実感をお持ちなのですね。

ええ、強く感じます。当事務所がターゲットとしている顧客層は、売上1億から数億円くらいの規模感の企業様が大半です。そうなると「高度な税務サービスが必要」というよりも、まず「利益を出すこと」や「人を採用すること」に課題を感じている企業様が多いわけです。こうしたニーズに、しっかり対応できるサービス展開が肝要でしょう。

同時に、これこそが自分たちの特性を生かす道だとも捉えています。当事務所が今からM&A支援や組織再編、国際税務、相続といった高度税務の分野に手を広げるよりも、自らが得意とする組織づくりや経営支援という面でご支援するほうが貢献の度合いは伸ばしやすいと考えました。実際に、この税理士業界で20名規模の事務所になっていること自体がニッチなこと。その経験はアピールしやすいですし、課題解決のお手伝いにも役立てていただけるのではと考えています。

そうして事業の幅を広げながら、お客様の成長を幅広い場面、多様な形でご支援できる組織として、2030年には売上5億円以上、スタッフ数も100名体制ぐらいまで伸ばしていきたいというのが現時点での目標です。こうした目標の達成に向けて、今後さらに意欲的な人材の採用を進め、その育成にも注力していきたいと考えています。


貴重なお話をありがとうございました。

プロフィール
石黒健太税理士事務所 所長 石黒 健太

京都を拠点に、起業家や中小企業の成長支援に注力する実践型税理士。2016年に滋賀で開業後、2018年に京都駅前へ拠点を移し、開業から5年で年商1億円を突破。現在ではスタッフ20名規模の体制を築き、未経験者を一人前に育てる教育・評価制度と、組織として再現性ある成果を出す「カルチャー経営」の仕組み化に取り組んでいる。2023年からは税理士向けのコミュニティ「1億突破会」を主催。
人材育成においては、1on1、月次フィードバック、評価シートの運用、行動指針の浸透を通じて、スタッフの自走力とマネジメント力を体系的に強化。実務経験ゼロからでも1年で戦力化できる育成フローを確立し、クラウドツールやAIも活用して、成長と生産性を両立させている。
事務所内では「マネジメントブック」や「経営指針書」を活用し、行動の背景にある価値観や思考法を共有。組織全体での価値観の共通化・実践を進め、職員一人ひとりが事務所の理念を体現する文化を育んでいる。

【受賞・認定】
 •マネーフォワード プラチナ会員事務所
 •経営革新等支援機関 トップ100事務所(5年連続受賞)
 •船井総研 税理士事務所研究会 優秀賞
 •京都府ライフ・ワーク・バランス認証企業

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