有資格者8割の事務所が到達したオールラウンダー育成法
管理職の直接指導が可能にする職員の圧倒的進化とは Vol.2

あいわ税理士法人
パートナー/第二事業部 本部長/税理士 中村 彰利(写真中央)
マネージャー/税理士 五島 学(写真右)
HR部 本部長 笠木 祐輝(写真左)
職員数90名のうち有資格者が8割を占める、あいわ税理士法人。クライアントの約7割が上場関連企業である同法人では、税理士の資格を最大限に生かしたパフォーマンスを発揮する「オールラウンダー」の育成と、それにともなう教育や研修をはじめとしたノウハウの蓄積によって、職員の成長、生産性、価値提供を最大化し、究極のクライアントファーストを実現している。所員教育とその実践内容、最終的に目指していく「オールラウンダー」について、詳しくお話を伺った。
所内専門家集団プラクティスグループが育む
オールラウンダーへの道
貴所の特長的な取り組みである、所員が自主的に立ち上げている活動「プラクティスグループ(PG)」がありますが、これはいつから始まった取り組みなのでしょうか。
笠木:PGは完全に通常業務とは別の取り組みで、ファミリーガバナンス、社団・財団/事業承継、社団・財団法人/M&A、バリュエーション、経営管理/ホールディングス化、組織再編などのグループに分かれ、所員が自主的に活動している活動です。
当所では、アシスタントスタッフ、スタッフ、シニアスタッフ、アシスタントマネージャーと職位が上がっていくのですが、このアシスタントマネージャーになったタイミングで、PGに自由に参画できるようになります。
中村:PGの着想は4年前、運用は3年前から開始しています。当所の職員はさまざまな分野に長けたオールラウンダーが多いにもかかわらず、以前から強みに掲げていたIPO以外の事務所の特長が外部からわかりにくいという話はよくしていたのです。
ホールディングス化、ストックオプション、事業承継なども得意なメンバーが揃っているのですが、発信されていないため認知されていない。それではもったいないと思い、提供できるサービスとして対外的にも明確にわかるように、サービスの柱として確立しようと考えたのが発端です。

それぞれ専門部署として設けている事務所も多いですね。興味のあるものに参加できるのでしょうか。
五島:PGもそれぞれ方向性が別なので、大きなくくりで言うと、コーポレートサイド側とオーナー支援側とに分かれます。最初こそ、当時その業務に携わっていた職員をPGメンバーとして招集して始まりましたが、そこからは挙手制で所員が自主的に運営しています。
PGも完全個別活動というわけではなく、例えばいわゆる富裕層対象としては、事業承継、信託、財団、資産管理会社といったいくつかのPGが一つに固まり、目標を立ててその中で各々できることをする形で動いています。現状8個近くのPGがあり、ノウハウが自動的に蓄積されています。
中村:当所では、職員はクライアントごとにつくので、自分のクライアントからホールディングス化という話が出てきたら、まずは気軽にホールディングス化のPGメンバーに相談します。そうすれば、社内で最もホールディングス化に詳しい人間に直接コンタクトが取れ、過去の事例確認やアドバイスなどのサポートをしてもらうことができます。同時に、その企業担当のマネージャーやスタッフは、PGのホールディングス化メンバーにジョインする形になるので、緩やかに専門性をつけていくことができます。
最近は会計業界でも業務を細分化していく傾向がありますが、PGを部などに分化させていくという考えはありますか。

五島:PGの担当も自身のクライアントを持っていますし、専門ごとに職員の業務を完全に切り分けるという発想はないですね。当所はクライアントごとに担当がつく形なので、起きる事象に対応していくという面で見ると、専門分野に分ける必要がないのです。クライアントファーストで動くので、企業の責任者や経営者と日頃からやりとりをしている人が、どの問題に対してもアタックしていくほうが話も早いし、状況も素早く正確に把握できていますから。
中村:事業承継一つとっても、その会社のことをよく知らない事業承継専門メンバーが来て、会計も税務も何も見ていないのに、一般的な勉強だけしたうえで申告書をさっと見て、一緒にやりましょうというよりも、その会社を長年担当して、社長とも腹を割った話ができている職員が中心となってサービス提供をした方が、一番クライアントの望む方向に進むと考えています。
クライアントが本当に必要としているのは何かを見極めていく必要があるのですね。
五島:ええ。それもあって当所はいわゆる手数料商売は、必要に応じて提案はしますが、積極的に働きかけることはありません。問題を解決できる人を紹介したり、クライアントの不動産をうまく活用して価値を高めたりすることができるのが、税理士業務の面白さだと考えているのです。そのため、売上に手数料販売が入らないのですが、クライアントからの顧問報酬で十分高い水準を維持することができていると感じます。
純粋にクライアントのためになることだけを追求できる環境で、私はとても気に入っています。
あいわ税理士事務所がめざす税理士の最終形態
「オールラウンダー」の姿
貴所がめざしている「オールラウンダー」について詳しく教えてください。
五島:当所では、対オーナーと対法人両方の観点でサポートを行うため、相続税、所得税、法人税、消費税、地方税も使う必要があります。これらのスキルや知識、経験値を六角形のグラフのようにバランスよく大きくして、そのうえで得意分野を伸ばしていく、それが当所でいうオールラウンダーです。法人、個人、中小企業から上場企業まで、どんなクライアントでも幅広く対応できて、最終的には「この人に聞けばなんでも答えてくれる」という圧倒的な信頼感を周囲から持たれる税理士のことです。

笠木:面接などでよく話をするのですが、社長の相続対策を行う場面で、そのための資産管理会社を作る提案をするためには、相続税はもちろん、法人税の再編の知識が必要だし、所得税の話も出ます。つまり一つのことを行うために、いろいろな税務の知識を提示できる状態にしておく必要があるということです。
そこでいえば、当所のマネージャー以上はみなオールラウンダーと言えます。そのうえで、個人がすべての分野において120点というのは無理なので、PGから130点の人を連れてくるイメージですね。
ちなみにマネージャーへの昇級は、どのような段階を踏むのでしょうか。
中村:次の職位への昇級は平均的に2~3年を想定しているので、スタッフから始まって、シニアスタッフ、アシスタントマネージャー、マネージャーで最短で6年ですね。能力があれば必ず評価をしています。
昇給の基準となる能力を測るために、どのような指標を設けていますか。
五島:コンピテンシー(高い成果を出す人材に共通する行動特性や思考パターンの形)として、職位ごとの項目があるので、マインドをはじめとしたさまざまな項目に関して点数換算して80点位以上取れていれば、次の階級に進めるようにしています。
会計税務の知識があることや申告ができるかはもちろん、クライアントからの難しい相談にも適切に返答できるということは必須です。そこにメンバーへの教育を行っているかも評価観点になります。
いろいろなタイプの人材が共存している組織なので、顧客対応が苦手だとしても、税法が飛び抜けてできる方であれば当然マネージャーになることができます。自分の税務知識を生かしてクライアントファーストを実現できるのであれば、どのようなタイプの方でも活躍できる環境だと思います。
本日は貴重なお話をいただき、どうもありがとうございました。
プロフィール |
---|
あいわ税理士法人 |
中村 彰利 パートナー/第二事業部 本部長/税理士
国内税理士法人を経て、2013年あいわ税理士法人に入所。国内上場企業やIPO準備企業に対する税務コンサル業務、多様な規模の法人に対する組織再編・M&Aに関するアドバイス業務、デューデリジェンス業務、非上場企業株価算定、富裕層の相続、事業承継案件、国外転出サポート業務など広く手掛ける。金融機関などと連携した事業承継や法人税務などに関するセミナーにも従事。 |
五島 学 マネージャー/税理士
大学を2年で中退した後、福島県の中堅日本酒メーカーにて、冬は職人として日本酒造り、夏は営業、広報などに携わった後、会社の成長を支える税理士という職業の魅力に出会い、会計事務所業界へ転職。 |
笠木 祐輝 HR部 本部長
個人会計事務所を経て、2014年あいわ税理士法人に入所。中小企業から上場企業まで様々なクライアントに対し税務コンサルティング業務補助、税務相談業務補助に従事。また現在、人材採用活動全般及び新人の教育・育成にも従事。 |