顧問先を守る!税理士が学ぶ暗号資産(仮想通貨)詐欺の基礎知識

顧問先を守る!税理士が学ぶ暗号通貨詐欺の基礎知識

暗号資産詐欺は、顧問先の資産に大きな影響を与えるため、手口と対策の理解が必要です。

暗号資産詐欺の被害にあうと、資産の損失のみならず税務上の問題まで発生することもあります。顧問先からの相談に対応できるように、最新の詐欺事例や注意喚起情報を抑えておきましょう。

本記事では暗号資産の詐欺について、代表的な手口と詐欺にあわないための対策を説明しています。

目次

暗号資産詐欺とは?

暗号資産詐欺とは、暗号資産そのものを盗み取る方法と、投資を募って現金を騙し取る昔ながらの投資詐欺の2通りの手口があります。

暗号資産詐欺の場合、暗号資産そのものを詐取する詐欺が多くを占めています。

暗号資産を盗み取る詐欺では、偽のICO(新規仮想通貨公開)を使った勧誘やフィッシング詐欺による個人のウォレットからの詐取が代表的な手口です。

暗号資産に関する代表的な詐欺の手口

税理士として把握しておくべき暗号資産に関する詐欺の手口を紹介します。

  • フィッシング詐欺
  • 市場のパンプとダンプ
  • 偽アプリによる搾取
  • 有名人からの偽の支持をアピール
  • クラウドマイニング詐欺
  • 不正なICO

フィッシング詐欺

暗号資産のフィッシング詐欺のターゲットは、オンラインウォレットに関する重要な情報です。

ウォレットへのアクセスを可能にする仮想ウォレットの秘密鍵を入手することができれば、暗号資産を丸ごと盗み出せる、というわけです。

暗号資産のフィッシング詐欺の手口は他の詐欺と同じです。偽のWebサイトのURLを記載したメールを送信して、秘密鍵の入力を求めます。秘密鍵を入力してしまったらウォレット内の暗号資産はすべて取られてしまうでしょう。

市場のパンプとダンプ

詐欺の犯人は、特定のコインの価値を高めるために、SNSなどを中心に派手な広告戦略を展開して、意図的に特定のコインの価値を高めます。

購入を散々煽って価格が高止まりしたところで、犯人は特定コインを売却して売り抜けてしまう、というわけです。犯人が売却した後は、特定のコインの価格は急落します。

株式の場合は相場操縦ができない仕組みが張り巡らされていますが、暗号資産の場合は比較的簡単にできてしまう詐欺の手口です。

偽アプリによる搾取

GooglePlayやAppleのAppStoreからダウンロードできる偽物の暗号資産アプリから、重要な情報を抜き取る手口です。

その他には、利益が出たところで出金しようとしたところ、保証金が求められる、などの手口もあります。

被害者が自発的に偽物アプリを使うというよりも、SNSやマッチングアプリで知り合った人に勧められるケースが多いようです。

いかがわしい偽物の暗号資産アプリは発見次第即座に削除されますが、削除されてしまう間にダウンロードしてしまった人が、被害にあっています。

有名人からの偽の支持をアピール

幅広い層にアプローチするための準備段階として、有名人やインフルエンサーからの支持を得ていることをアピールします。信用を高めて暗号資産の投資経験が浅い人を騙すには良い方法です。

十分な信用が得られれば、存在しない幻の暗号資産を売りつけることもできます。

クラウドマイニング詐欺

クラウドマイニングとは、マイニングを行っている会社へ投資する見返りにマイニングで得た収益の一部を受け取ることができるサービスです。

クラウドマイニングを利用すると、自分でマシンを用意することなくマイニングに参加できる、というわけです。

しかし、多くのクラウドマイニング会社は詐欺を行っています。詐欺を行っていないとしても、クラウドマイニングで利益を得ること自体が難しいことから、クラウドマイニングそのものが詐欺という見方もあります。

クラウドマイニングで投資をしても、十分な利益を得ることはできません。

不正なICO

ICO(Initial Coin Offering)はIPOの暗号資産版と考えるとわかりやすいです。

スタートアップ企業などが独自の仮想通貨を発行して、企業やユーザーから資金を調達します。

よくあるICOは、ビットコインなど人気で流動性が高い暗号資産と引き換えに、新しい暗号資産を割安に手にいれる権利を獲得できる、というものです。ICO詐欺の場合、こちらが暗号資産を差し入れたと同時に連絡が取れなくなります。嘘のICOによって暗号資産を詐取されるという手口です。

犯人は立派なオフィスを一時的に借りたり、立派な分析用の資料を用意したりするなどして、騙しのための一瞬にすべてを賭けています。

暗号資産詐欺に引っかからないための対策

暗号資産詐欺に引っかからないための心構えや、基本的な管理方法について詳しく説明します。

  • ウォレットの管理とウォレットアプリの扱いに気を付ける
  • 十分な下調べによって理解できたものにだけ投資する
  • SNSの広告に注意する
  • 公式プラットフォームからアプリをダウンロードする
  • 安直なうまい話を信用しない

ウォレットの管理とウォレットアプリの扱いに気を付ける

暗号資産を安全に保管するためには、適切なウォレット管理が必要です。ウォレットの種類はホットウォレットとコールドウォレットの2通りです。

ホットウォレットはオンライン環境に接続されていることから、利便性の高さとスムーズな取引ができるメリットがありますが、ハッキングのリスクが高いです。

コールドウォレットはオフラインで管理されているため、セキュリティは高いものの、利便性に劣ります。

利用する分だけをホットウォレットで管理し、いますぐに使わない分はコールドウォレットで管理する方法が望ましい管理方法です。

十分な下調べによって理解できたものにだけ投資する

暗号資産への投資は、価格変動が激しく、複雑な技術や市場原理が絡み合うことから安易な判断が大きな損失に繋がる可能性があります。市場での評価やリスク要因などを十分に分析の上、投資対象となるか判断しましょう。

理解が十分にできないまま、情報や甘い誘い文句に騙されることなく、自ら情報を収集、分析し、納得できるものだけに投資する心構えが必要です。

SNSの広告に注意する

暗号資産詐欺はSNSを巻き込んだ大掛かりな宣伝をすることが多いです。有名人や著名なビジネスマンの画像を無断で使ってそれらしい宣伝を行い、投資してくれたら景品や現金をプレゼントするとアピールします。

有名な人が広告に使われるとつい信用してしまいがちですが、暗号資産にまつわる内容は、いつも猜疑心を持って見ることが大切です。

公式プラットフォームからアプリをダウンロードする

暗号資産関連のアプリをダウンロードする時はGooglePlayStoreやAppleのApp Storeからダウンローするようにしましょう。

前述の通り、公式プラットフォームにも偽のアプリが存在する可能性もありますが、よくわからないサイトからダイレクトにダウンロードするよりはいくらかましです。

いかがわしいサイトに重要な情報を入力してしまうと、大事な情報はすべて詐取されてしまいます。

安直なうまい話を信用しない

暗号資産への投資なのに、元本保証や短期間で大儲けできるなど、荒唐無稽な嘘をいう会社には注意が必要です。

実際には暗号資産の取引では、元本は保証されていません。短期間で大儲けできる可能性はありますが、同等のリスクを負うことも認識しておく必要があります。

できすぎた話を簡単に信じないようにしましょう。

暗号資産詐欺に引っかかってしまった場合の対処法

暗号資産詐欺に引っかかってしまった場合に、取るべき対処法について説明します。

  • 被害状況を把握と証拠の確保
  • 関係機関への相談と届出
  • 金融機関へ連絡する

被害状況を把握と証拠の確保

暗号資産詐欺に遭ってしまった場合は、まず被害状況の整理と把握が必要です。また、証拠の確保も行わなければいけません。

詳細を報告するために、いつ、誰に、どんな状況で詐欺にあったのか詳しい経緯を時系列でメモしましょう。時系列の整理と並行して、犯人とのやり取りや送金、取引所の履歴など、関連する証拠をすべて確保します。

相手の名前や連絡先、利用したWebサイトや取引所のURL、振込先の口座情報まで、可能な限り証拠として特定します。

関係機関への相談と届出

被害に遭ってしまった時に、最初に連絡する関係機関は最寄りの警察署です。警察ではサイバー犯罪への特別な対応も行っており、相談内容に応じて適宜対応してくれます。

相談は金融庁の金融サービス利用者相談室で対応可能です。怪しい投資話なのか自分で判断ができない場合に、客観的な判断を下してくれます。

登録された暗号資産交換業者とのトラブルは、日本暗号資産等取引業協会に相談しましょう。

金融機関へ連絡する

詐欺に利用された可能性のある銀行口座やクレジットカードがある場合は、即座に金融機関に連絡して、利用停止にします。口座もマネーロンダリングに利用される恐れがあるため、凍結しましょう。

詐欺に利用された取引所がある場合は、詳しい状況を説明して、アカウント凍結の措置を講じます。

まとめ

暗号資産詐欺は、ポンジスキームのような投資詐欺の他に、フィッシング詐欺や不正アクセスによる窃盗、不正なICOによる詐取など様々な手口があります。

現金の詐取だけでなく、暗号資産を騙し取る詐欺が多いのも特徴の一つです。

顧問先から暗号資産に関する相談を受けた場合は、関連情報として詐欺の手口と事例を伝えておくと親切です。もしもの時の相談窓口も合わせて紹介しておくと、より安心してもらえるでしょう。

税理士.ch 編集部

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