会計事務所が担う介護経営情報“報告代行”実務の概要<小濱道博先生の介護特化塾 vol.01>
本コラムでは、介護経営コンサルタントとして、日本トップクラスの小濱道博先生が、介護業界の「知って得する」トピックスを取り上げて解説します。会計事務所の皆様に、介護マーケットの魅力・重要性のほか、介護特化を進めるためのヒントや戦略などを毎回お届けします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.136(2025.2)に掲載予定となっております。
小濱介護経営事務所 代表
C-SR(一社)介護経営研究会 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
小濱 道博 先生
2025年1月6日13時より、介護サービス経営情報提出が始まった。提出期日は3月末で、今回の提出対象法人は2024年3月から12月決算法人である。2024年1月および2月決算法人は、次回からの提出となる。ただし、次回とは言っても、決算月後の3か月以内の提出が必要なため、それぞれが2025年4月および5月までに提出しなければならない。社会福祉法人についても報告が必要である。病院や介護老人保健施設に併設する、みなし指定事業所も同様である。居宅療養管理指導や養護老人ホーム、介護予防支援は対象外となった。
期日までに提出をしない場合は、期間を定めて報告もしくは内容を是正することを命ずることが出来るとされている。その命令に従わない時は、指定の取消もしくは業務停止の処分が出来るとされた。この規定は、介護保険法の本法にある。
ここで問題となるのは、介護サービス事業者の7割が小規模事業所であることだ。会計事務所の使い方も、領収書を丸投げするといった単なる記帳代行を依頼しているケースも多い。事務員がいない法人も多く存在する。経理事務は、代表者自らか家族が行っているような経営者の多くは、財務諸表の読み方が分からないのが現実である。会計事務所などに、経営情報提出の代行サービスの提供を期待する声が業界内から聞こえてくる。
しかし、1月から3月にかけては、会計事務所にとっては確定申告時期と重なる。また、6月も5月申告法人が多く、繁忙期である。このため、介護事業者のニーズが多い代行サービスの提供は、時期的に難しいと言われていた。同時に、介護事業者の新規顧客の取り込みの好機と考えて、提出代行サービスの提供を検討している会計事務所も相当数、存在する。
経営情報の提出方法は、介護経営データベース(介護経営DB)が整備された。ここに手入力するか、会計ソフトでCSVファイルを作成して、電子データとして送信する形となる。経営情報の提出作業に当たっては、GビズID(gBizIDプライム)のアカウント取得が必要である。
GビズIDは以前から存在する。この特徴として、第三者への外部委託がシステム上で可能であることもご存じかと思う。この機能を使って、経営情報提出の代行サービスの提供を計画している会計事務所も多いことだろう。しかし、今回の経営情報提出については、この外部委託機能が利用できないことがアナウンスされた。これよって、提出代行サービスの提供が、一気に困難になったと言える。
では、会計事務所が経営情報提出の代行サービスを提供することは無理なのか。その方法は存在する。ただし、複数のメールアドレスを用意する必要がある。この場合、アプリでの認証機能は使わない。実際に多くの代行委託を受託する場合は、管理が難しいと感じている。提出漏れがあっては大変であるが、リカバリーが可能なのでリスクは低い。その方法については、私の方で、実際に提出代行を行うことで、ノウハウの検証を進めている。
そのノウハウと検証結果については、2/14(金)14:00~16:00 「厚生労働省発出の運用マニュアルを全解説! 会計事務所が担う介護経営情報“報告代行”の実務 ~義務化を契機とした介護特化戦略の進め方~」でお伝えします!
小濱道博
こはま・みちひろ/介護経営コンサルタントとして、全国各地で介護事業全般の経営支援、コンプライアンス支援に 特化した活動を行う。2009年にC-MAS 介護事業経営研究会の立ち上げに関与。 税理士、社労士など200を超す専門士業事務所との全国ネットワーク網を構築し、 国内全域の介護事業経営者へのリアルタイムな情報提供と介護事業経営の支援活動を行う。 介護経営セミナーの講演実績は、全国で年間300件以上。 書籍の大部分はAmazonの介護書籍で第一位を獲得。