色彩のみからなる商標とホログラム商標<経営戦略のための知財Vol.28>【最終回】

特許業務法人 浅村特許事務所
会長・弁理士 金井 建

2022/8/12

M&A、経営戦略、融資判断などで知的財産の占める割合が高まる中、その経済的価値を把握することは企業にとって必須です。そこで、業務に最適な知的財産価値評価サービスを提供している浅村特許事務所の金井建先生が、経営に役立つ知財の活用法について解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.105(2022.7)に掲載されたものです。

知財におけるマーケティング戦略⑬


色彩のみからなる商標
色彩のみからなる商標も商標登録の対象となります。下記のMONO消しゴムのカバーカラーである青、白、黒の色彩の組み合わせは、登録が認められました。この商標が、色彩のみからなる商標登録第1号となります。

色彩のみの商標登録制度が開始されて5年が経過しますが、色彩のみで商標登録されたのは10件に満たない数にとどまっています。これは、色彩のみで特定の商品やサービスを需要者が識別することはまれで、登録には非常に高い周知性が要求されるためです。

特に一色のみの商標登録は認められていません。ティファニーの空色、エルメスのだいだい色は、一つのブランドカラーとしてイメージすることができます。しかし、一つの色に商標権を認めてしまうと、指定商品や役務の範囲内において、半永久的に商標権者以外の者はその色を使用できなくなります。そのため、登録は認められにくいという事情があります。


ホログラム商標
ホログラム商標とは、見る角度により表示される文字や図形が変わる商標のことをいいます。ホログラム商標は10数件程度しか登録が認められていません。参考に、下記の東レのホログラム商標をご紹介します。


以上のように、商標の保護範囲対象は広くなりました。様々なタイプの商標登録が認められていますが、海外でも日本と同様に保護対象が拡大しています。

まとめ
これまでマーケティング戦略におけるブランド戦略を、商標を中心にご説明してきました。ブランド化には商標を付した製品を販売、サービスを提供し続け、広告宣伝を行う必要があります。ブランド化には、費用と時間と労力がかかるのです。従って、どのブランドにどの程度力を入れるかが、重要な経営判断となります。企業には、下記のような知的財産の戦略的活用が必要であることを説明してきました。

将来の自社事業の方向性に沿った技術やサービスの創作、デザインの創作、マークの選択
知的財産権の取得、知的財産権の整理、維持管理
知的財産のノウハウ(営業秘密)、管理(不正競争防止法の活用)
知的財産権による権利行使(独占的実施・使用)
著作権の活用による収益の確保
知的財産権の購入や移転、ライセンス制度の活用

さらに、知的財産権の戦略的活用方法としては、

マーケティング戦略、ブランド戦略
競業対策としてのクロスライセンス、パテントプール戦略
知財ミックス戦略 
知財グローバル戦略
オープン&クローズ戦略 
オープンイノベーション
知的財産価値の評価と活用(M&Aのデューディリジェンス、金融機関対応(担保))

等があります。

2022年6月6日に政府の知的財産戦略本部が、「知的財産推進計画2022」を決定しました。日本が発展するためには、知的財産をフル活用しなければなりません。企業の活動において「経営戦略のための知財」を常に意識し活用することで、企業の発展につながることを期待します。

登録後送られる認証用メールをクリックすると、登録完了となります。

「税理士.ch」
メルマガ会員募集!!

会計人のための情報メディア「税理士.ch」。
事務所拡大・売上増の秘訣や、
事務所経営に役立つ選りすぐりの最新情報をお届けします。