位置商標とは<経営戦略のための知財Vol.27>
特許業務法人 浅村特許事務所
会長・弁理士 金井 建
2022/7/8
M&A、経営戦略、融資判断などで知的財産の占める割合が高まる中、その経済的価値を把握することは企業にとって必須です。そこで、業務に最適な知的財産価値評価サービスを提供している浅村特許事務所の金井建先生が、経営に役立つ知財の活用法について解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.104(2022.6)に掲載されたものです。
知財におけるマーケティング戦略⑫
位置商標
新しいタイプの商標のうち、今回は「位置商標」をご紹介します。位置商標とは、文字、図形、記号や立体的形状のマークを付けた位置が特定される商標のことです。位置商標は、そのマーク部分だけでは識別力はありませんが、そのマークを商品につけた位置に特徴がある場合に、その商品自体に識別力が生じることから登録が認められています。
そのため位置商標は、マークと位置の組み合わせから構成されています。下記の①は、化粧品の入れ物の側面に赤いリボンのマーク部分(②参照)で特定した位置商標です。この位置商標が、位置商標登録第1号となります(浅村特許事務所が代理事務所)。
このように位置商標は、商品全体を点線などで表し、保護を受ける箇所(位置)を実線や着色して特定する方法が用いられます。
分かりやすい例として、③のカップヌードルの位置商標をご紹介します。カップ周面に黄金で描かれた3つのライン部分の組み合わせを、位置商標で登録しています。単純に黄金で表した部分のみではカップヌードルという商品を認識できませんが、点線部分を確認することで、商品全体として識別力を発揮し、カップヌードルのカップと分かりますね。
位置商標は、マーク部分の位置により識別力を発揮し、商標登録が認められるものですので、単純な形状等で識別力のないマークであっても、商品等の特定の位置に使用をされた結果、どの会社のどの商品であるかを認識することができるようになれば、商標登録を受ける可能性があるという意味で、通常の商標登録と同じ扱いとなります。
商標権は、登録商標の類似範囲にまで効力が及びます。登録商標に類似した商標の他人の使用を排除することができるのです。位置商標の場合は、その付された位置が登録商標の位置と違う場合であっても、原則登録商標と類似すると判断される点に特徴があります。
③の例であれば、カップ周面のライン位置が多少ずれていても、やはりカップヌードルのカップであるとの認識は変わりません。したがって、第三者のこのような使用は登録位置商標の権利範囲の使用となり、位置商標の権利を侵害することになります。
このように、商品に付されたデザインの位置がブランドとして機能していることが分かります。