【令和6年度】実務への影響は?税制改正大綱「外形標準課税の見直し」について解説

ビズアップ総研
税理士.ch 編集部

(2024/4/26) 

外形標準課税は、資本金1億円超の法人に対して課せられるため、中堅企業や大企業の間では、資本金を1億円以下とする形の課税逃れが横行していました。その対応策として今回、資本金だけでなく資本剰余金も含めて、外形標準課税の対象企業を判定する見直しが行われました。

目次

外形標準課税とは

外形標準課税は、資本金1億円超の法人に対して課せられる法人事業税です。法人事業税は、都道府県に対して納税しますが、課税標準は所得基準と外形基準の2本立てとなっています。

所得基準は、各事業年度の所得に対する所得割です。外形基準は、収益分配額と単年度損益の合計である付加価値割と資本金等の額を基準とする資本割があります。

外形標準課税の見直しの背景

外形標準課税のうち、資本割については、資本金が1億円を超える企業が対象となっていたことから、資本金を1億円以下に減資することによる課税逃れが横行していました。特に、資本金から資本剰余金への項目振替を行うケースが多いようです。

また、企業グループでも持株会社化や分社化の際に、100%子会社の資本金を1億円以下に設定するなど、企業の規模の実態に合わない資本金額を設定することによる課税逃れが増えていると指摘されていました。

外形標準課税見直しの内容

資本金1億円超の法人が外形標準課税の対象となる制度については変更はありません。
ただ、令和7年4月1日からは、次の要件を満たす企業は、資本金1億円以下となった場合でも外形標準課税の対象となります。

  • 当該事業年度の前事業年度に外形標準課税の対象となっていたこと。
  • 当該事業年度における資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えていること。

外形標準課税の対象の判定は事業年度末の状況で行い、令和7年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

また、令和8年4月1日からは、企業グループの100%子会社は、資本金1億円以下でも次の要件に該当している場合は、外形標準課税の対象となります。

  • 企業グループが資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人であること。
  • 資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えていること。

なお、この規定によって新たに外形標準課税の対象法人となったことにより、従来の課税方式で計算した税額を超える場合は、次のとおり税負担が軽減されます。

  • 令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度 当該超える額の3分の2を軽減
  • 令和9年4月1日から令和10年3月31日までの間に開始する事業年度 当該超える額の3分の1を軽減

外形標準課税の対象の判定は事業年度末の状況で行い、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

外形標準課税見直しの影響を受けない企業

なお、次のような中小企業やスタートアップは、外形標準課税見直しの影響を受けません。

  • 資本金1億円以下の中小企業
  • M&A等を通じて合併する中小企業
  • 増資で資金調達するスタートアップ企業

こうした企業の資本剰余金が増加した場合でも、外形標準課税の対象とならないことを周知しましょう。

また、企業グループでも、地域の中核となって成長を目指す中堅・中小企業が、令和9年3月31日までに、M&Aにより中小企業を子会社化した場合で、産業競争力強化法の特別事業再編計画の認定を受けていれば、既存の100%子法人について、当該取得日を含む事業年度から、取得日以後5年を経過する日を含む事業年度までは、外形標準課税の対象にならない特例措置が設けられます。

外形標準課税見直しによる影響

現在、外形標準課税の対象となっている法人は、令和7年4月1日以後に開始する事業年度以後に資本金を1億円以下に減資したとしても、外形標準課税の対象になります。

また、資本金と資本剰余金の合計額が50億円超の外形標準課税対象法人の100%子法人で資本金及び資本剰余金の合計額が2億円を超える法人は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から外形標準課税の対象になります。

今後、増資や組織再編によって資本金及び資本剰余金を増加する場合は、外形標準課税の対象となる可能性があることに注意する必要があります。特に、100%子法人外形標準課税の対象になる大企業の場合、グループ全体の税負担が大幅に増加する可能性があることに留意すべきです。

まとめ

今回の改正は、資本金1億円超の法人が外形標準課税の対象と現行要件を維持したまま、新たに要件が追加されたため、外形標準課税の対象となる法人が増加することが想定されています。

外形標準課税は、事業が赤字でも課税されるため、顧問先の企業が外形標準課税の対象となるかどうか把握したうえで、想定される税負担額を示せるようにしておくことが大切です。

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